1998
日本山岳耐久レース
(長谷川恒男カップ)

直井昌士(昭56卒)

 

 御岳のチェックポイントからは、御岳神社前の街の中を通過。
 人家を見るのは久しぶり。
 日の出への緩やかな尾根を行く。
 このあたりでも、ウルトラの後半とはぜんぜん違う。
 下りで酷使した足裏と、下りで使う筋肉と膝、あと尻(^^;には確かにダメージがあ るが、登り&平坦系の筋肉はぜんぜん元気。
 汗も気持ちよくどんどん出る。
 眠気もないし、快調快調。
 気持ちよ〜く、ちょっと登るともう日の出山。8:40。
 ここもまた素晴らしい眺望。
 50代と思われる山屋の女性と「ここまで来ましたね〜」と会話を交わす。
 制限時間まであと4時間以上。完踏は間違いない。
 歩いて2時間も可能なら、1時間30分くらいで下れればいいか。
 8:45チューブ式のウォータバッグを満タンにして、いざスタート。
 勢いよく、駆け下りる。
 しばらく下っても、大岳の下で別れたパーティに追いつけない。
 私が休み過ぎているのか、前を行くパーティが速いのか。
 だんだん、ガス欠の気配がしてくる。
 1時間30分だから、と最後の補給を怠ったのがいけなかった。
 グリコーゲンは枯渇寸前だったのか。
 とにかく腹が減って仕方がない。
 背負っている食料はまだあるものの、でも下ろして食べる気にはならない。
 (あと3kmとかって地点で、もぐもぐ飯食ってるのはやっぱりねえ(^^ゞ)
 このまま永遠に追いつかないか、と思ったところでようやく先行するパーティに追 いつく。  確かに、快調に歩いている。
 なかなか追いつかないわけだ。
 追いついた安心感からか、急に力が抜け、後ろについてしばらく歩くが、やはり走っ た方が楽(早くゴールして楽になりたい)ということで、声をかけて先に行く。
 ガス欠はどんどんひどくなり、スピードはどんどん落ちる。
 これじゃ、本当にウルトラの最後と一緒だ。
 下りなのに10分/km。
 それでも、歩かずに、なんとかJOGを続けていると、五日市の街がどんどん眼下に 近づいてくる。
 自然人レース(私の大好きな、毎春、秋川渓谷で行われる川を走るレース)で慣れ 親しんだ、秋川の河原が見えている。
 川がキラキラ輝いている。
 暖かそうな日なたの景色。
 腹減ったよお、苦しいよお、と思って下り続けていると、曲がり角から、ひょっと、 応援の友人が現れた。
 ああ、本当にもうすぐなんだ、とホッとする。
 励まされてもスピードは上がらないが、空腹を饒舌に訴える元気は残っていた。
 昨日のスタート前、食料買い出しの時に五日市駅前のコンビニで見た、「キリン・ ヨーロッパ ヴァイスビール」(ちょっと甘いビール)。
 三頭山の登りのあたりから、こいつが頭の中をぐるぐる回っていた。
 「悪いけど・・・」と、友人に銘柄指定でお買い物依頼(^^;
 友人に伴走されながら(厳密に言うと伴走行為は禁止かな(笑))、街へ入ると、 すぐにゴールが待っていた。
 21時間12分台。
 日の出から1時間30分はなんとか達成だ。
 「ちょっと謙遜した」「楽観的な」目標も達成して、大満足のゴール。
 最後は空腹で死にそうだったけど、とにかく、一晩中、楽しめたレースだった。
 20分もしないうちに、件のパーティもゴール。
 拍手でお迎え。
 日本山岳耐久とは、実に不思議なレースだ。
 山屋とランナーが一緒にゴールを目指すというところも面白いし、コース設定もな かなか素晴らしい。
 自分たちが登ってきた尾根を、向かい側から見る、という周回設定が、なんとも粋 だ。
 そして、このレースを特徴づけるのは、なんといっても、自己責任の原則。
 水も食料も寒暖も悪天も、全て、自分でなんとかしなければならない。
 「給水が少ない」とぼやくのではなく、「水を持ってくる量を間違えた」と考えな ければならない。
 与件はすべて、事前に提示されている・・・。
 例えば、装備を極限まで減らしてスピードを求めるもよし。
 でかいザックを背負って、山の上で鍋焼きうどんを作るもよし。
 そんな懐の深さを持っている。
 私が体験した、秋田・野辺山・阿蘇のウルトラマラソンとは、明らかに違う存在感 のあるレース。
 空の上から、長谷川恒男が笑ってみているように感じた。
 レース中のダメージはあまりないと感じていたが、帰ってきてみると、足は相当ヤ ラレているし、肩や背中、腰の疲労も感じている。
 時間的には、山屋が歩き続けてゴールできる時間設定。
 ランナーにとっては、下りと、夜が課題だと言えそう。
 以前の山岳耐久レポートの中に、無神経なゴミ捨ての記述があり、気になっていた。  しかし、最近はかなり改善されてきたという話も聞いていたので、今回はどんなも のかと思ったが、やはりゴミは目についてしまった。
 ある山屋さんが、道を外れて落としてしまった予備電池を、深夜、相当の苦労をし ながら拾いに行く姿を見、また一方で、無造作に(明らかに故意としか思えない状態 で)捨てられた、カーボショッツやアミノバイタルやウィダーインゼリーなどの、ど ちらかと言えばランナーが好んで使うアイテムの(どう考えても自然には還らない) パッケージの数々(その他には殆どゴミはない。当たり前か)を見ると、  暴論を承知で言い切ってしまえば、山屋という種族と、ランナーという種族の、「 生態圏」の中にいるという意識の差を見た、といっても過言ではないと思う。
 少なくとも、ゴミ捨てという行為に対する意識の浸透の差、は明らかだろう。
 ランナーのはしくれとして、非常に残念な思いをして下山してきた。
 私自身も、鉛筆一本落としてきた。
 清掃登山相当行為(自己満足)を、今週末の高尾山でしてこようと思う。
 最後に。タイムと、食べた物と、装備の総括。
【タイム】  リザルトは別添。
ゴールタイム→21゜12'(コースタイム比 82%)
実動 → 18゜40'(コースタイム比77%)
(休憩トータル 2゜32')
【食料】
 このほかに、カシューナッツや、ジュース類からもカロリー摂取をしていること、 また最後ガス欠したことを考えると、「180cm,80kg,36歳男性,燃費最悪,21時間台完 踏」という条件では(誰が他に該当するんだか(笑))、3500Kcalは持っていった方 がよい、というのが、今回の私の結論です。
 最後の大空腹のとき、ウェストバッグに栗饅頭が入っているのを忘れていたのが悔 やまれます。
 すっかり忘れて、フリスクなどをガリガリ囓りながら、「こんなんじゃ腹の足しに なんねー」と嘆いていたのでした。
 また、エナジータブ(デキタブ=ブドウ糖の塊)をもっと取り出しやすい位置に携 帯するべきでした。
 なお、もし同じ条件なら、スタート時の水を私はもう500ml増やして、4500ml持っ て入ります。
 私は水の方も、相当燃費悪いですが。

 

Kcal
数量
実摂取量
全体
摂取カロリー
合計

 

 

 

3780

2835

おにぎり

150

12

10

1800

1500

エネルギーインゼリー

160

2

1

320

160

パーフェクトケーキバー

200

1

1

200

200

パーフェクトバー

200

1

1

200

200

エナジータブ

1

100

5

100

5

カーボショッツ

70

6

3

420

210

カロリーメイト缶

200

1

1

200

200

カロリーメイトブロック

100

2

1

200

100

魚肉ソーセージ

20

3

3

60

60

100

1

1

100

100

みかん

50

2

2

100

100

栗饅頭

80

1

0

80

0

【装備】
 ぜんぜん不要だったもの
  ・キャップホルダー。無風に近かったし。
  ・キャップの首筋用の日除け。木陰があるので、不要。
  ・フリースのジャケット。もし次回があれば、持っていかない。
  ・小銭入れ。金。
  ・ライター。
  ・下りてきた時用のシュラフ(早々でのリタイア対策で、体育館に置いといた)  必需品だと思ったもの
  ・ストック2本。ぜひ2本持ちをお奨めします。
  ・予備のヘッドランプ。
  ・ワセリン。このレースだけで1本ほとんど無くなりました。
  ・手袋。
 持っていけばよかったもの
  ・吸水性の高いタオル
  ・予備の鉛筆。あるいは鉛筆を落とさないための何かしらの仕掛け。
  ・カメラ 

 以上、長文失礼いたしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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