くろがね小屋には一時間ほど滞在した。着がえもすませて気分さっぱり。靴も履きかえ、あとは林道のようなだらだら下りを小一時間、山麓の紅葉を愛でつつぽくぽく歩く。5時、奥岳温泉着。ちょうどあたりに闇がおちた。バスの時刻表を見ると、最終は4時30分。くろがね小屋でバス時刻を確認してこなかったことが悔やまれるが、知っていたとしても、温泉を割愛しなければ間に合わなかっただろう。それはできない相談だ。ホテルのフロントからタクシーを呼ぶ。
 けっきょく来たときとおなじように岳温泉からバスに乗り、二本松へ。新幹線は7時9分郡山発。さすがに帰りはすいていた。
 忘れ物はどうやら見つかったようだ。車中では行きに買ったウイスキーをちびちび飲りながら、地形図で今日の行動を反芻し、宇都宮あたりから、夢のなか――。
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