[chronicles]



1963(昭和38)年度をふり返って

堀口正治



反省:

詳しくはレポート21号で山田が「春合宿について」という題で述べている。そこに書かれていることでほぼつくされているのであるが、今一度ふり返ってみたい。計画段階に関しては目的地決定の時期、無雪季の偵察、その他それほど不充分だったとは思えない。むしろ問題は計画実行直前、及び実際の合宿遂行段階にあったと思う。OBの参加を得られなかったこと、参加部員の掌握の不充分さ及びそのための参加部員数の減少により高二が主力にならざるを得なかったこと。上級生が多いということは本来ならば強力なパーティーが組めることを意味するのだが、明年受験を控えた高校二年生のこの時期に山へのファイトをどこまで燃やせるか。出発の日を遅らせてようやく参加人員の頭数をそろえるという状態であったと思う。チーフリーダーであった小生自身恥しいことだが、勉強が心配になり出したころでファイトがぐらついていた。やめるわけにもいかずずるずると合宿を行なって良い結果が得られるはずがない。このことは合宿中にも云えることで、山田は小生を攻撃していないが、本来最も責任のあるのは小生であった。高校二年生もこの時期になれば誰でも受験が心配にならないはずがなく、その結果、山へのファイトがにぶるのはやむをえないと思う。そんな時、合宿を成功させるにはOBの参加を必ず得ることが必須である。合宿が失敗した原因は以上述べた他に、異常に多い雪にもよっている。事実翌年の春合宿では苦労したトラバースなど難なく通過している。しかしあくまでもこれは副次的要因であって、根本にあるのは高二指導層特に小生の部員指導の不充分さとファイトの不足であり、それを補ってくれるOBの参加を得なかったことである。大きな山行においては例外はあろうが、未熟な高校生を援助してくれるOBの参加は原則的に必要であると思う。技術的な面でもそうだがそれ以上に精神的な面でOBの存在は大きい。要するに、この合宿で反省されるべきことは山へ登らないで帰ったこと自体ではない。充分力をつくして登れなかったのではなく、力をつくさずして帰ってきたことである。その原因として小生を始めとして指導層の指導力、統率力の欠如及びファイトの不足があげられる。それは高校生としてやむをえない面もあるから、小生はそれを補うOBの力を借りるべきであると云いたいのである。


38年度の部活動をふり返って:

今、12年もたって当時のことをふり返っても、そのころ考えていたことの何分の一も思い出せないしそれも10年を越す年月の波にもまれて姿を変えているかもしれたい。だからそれをここで述べてもあまり意味がないと思う。山行記録は幸い部報が残っていたのでそれに副って書いた。春合宿の後ろにやや長い反省を書いたが、これは当時考えていたというよりその後から現在に至って考えていることというべきであろう。それはこの年度の反省にも通じている。楽しいことも多かった。富士山から南アルプス、中央アルプス、上越の山、近くは丹沢や奥多摩といろいろな山へ足を延ばした。多くの仲間がいた。他の学年については他の人が書くだろうから同学年の仲間についてだけ触れておこう。まず山田について書かねばなるまい。彼は小生をあらゆる面で助けてくれ、下級生の良き指導者であり、年度の後半は部活動の中心的存在だった。彼の体力は抜群で、どの合宿でも一番重い荷を背負っていた。小生とは性格が対称的であったように思うがそれでいて結構うまくいっていた。次には藤原について書かねばなるまい。彼の性格には小生や山田の登り方は合わたかったのではないかと思うが、それにもかかわらず大きな山行には必ず参加していた。彼は卒業後、小生や山田が麻布の山岳部とはそれぞれの事情により縁が遠くなってしまった中にあって、よく下級生の指導に携ってくれた。有田とも多くの山行を共にした。彼の独特のパーソナリティーは下級生に少なからぬ影響を与えていた。西野や荒川、広瀬等も共にした山行こそ少なかったが、日頃の付き合いも含めてまた忘れ得ぬ仲間である。最後に、小生は卒業以来東京を離れたこともあって、全く麻布の山岳部とは縁が薄くなってしまった。現役時代多くのOB諸氏の指導を受けながらそれに何一つ報いることができなかったことを申しわけなく思っています。以上筆の向くまま小生の私見を述べたが、反省や年度の感想については大いに異論もあろうかと思う。本来ならば皆と話し合うべき性格のものであるが、そういう機会もとてももてないので小生の私見を述べたことをお許し頂きたい。

(1976年記)





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